Moorstone Placeでは、メニューを年に四回書き直します。前の季節の料理は、翌年の同じ季節まで出しません。これは効率的な方法ではありません。食材の仕入れ先との調整、スタッフへの新しい料理の説明、試作の時間。毎回、相当な労力がかかります。それでもこの方法を続けている理由を、少し説明します。
同じ食材でも、毎年違う ¶
清水農園から届く桃太郎トマトは、毎年同じ品種ですが、毎年味が違います。土の状態、その年の気温、雨量。これらすべてが糖度と酸味に影響します。同じレシピで作っても、同じ料理にはなりません。それなら、その年の食材の状態に合わせてレシピを変える方が誠実だと思っています。メニューを固定することは、食材の変化を無視することでもあります。
料理人の記憶と集中力 ¶
同じ料理を長期間作り続けると、作業が自動化されます。それは効率という意味では良いことですが、料理の質という意味では危険です。毎回新しいメニューを作ることで、厨房の集中力が保たれます。Haruki Nishimuraは「慣れた料理ほど、丁寧に作れなくなる」と言います。この感覚は、12年間の修業の中で学んだことのひとつです。
お客様との時間の共有 ¶
「また同じ料理が食べたい」という声をいただくことがあります。それは嬉しいことです。でも、その料理が特別だったのは、その季節の食材があったからです。同じ料理を別の季節に出すことは、その料理の本質を変えることになります。翌年の同じ季節に、また来ていただけることが、Moorstone Placeにとっての理想的な関係です。
試作と失敗の記録 ¶
新しいメニューの試作は、季節が変わる3週間前から始めます。毎回、いくつかの料理は試作段階でボツになります。今年の夏メニューでは、トウモロコシを使った冷製スープを試みましたが、清水農園のトマトと同じコースに入れると味が重なりすぎると判断して外しました。こういう判断の積み重ねが、最終的なコースの構成になります。
年4回のメニュー改訂は、手間のかかる選択です。でも、この手間が料理の誠実さを保つ方法だと思っています。今季のメニューは、今季のメニューのページでご確認ください。